産業廃棄物の排出事業者は、その運搬や処理を他の業者に委託する場合、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付し、委託した産業廃棄物が適切に処理されているかを把握しなければなりません。これをマニフェスト制度と呼び、このマニフェストには複写式伝票を使った紙マニフェストと電子情報を活用する電子マニフェストの2種類があります。今回は特に紙マニフェストの利用の流れや書き方について、詳しく解説します。
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紙マニフェスト×電子マニフェスト徹底比較
電子マニフェストの導入を検討している産廃担当者社の方向けに、概要やメリットについて詳しく解説します。
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目次
01マニフェスト制度とは
マニフェスト制度とは、産業廃棄物の運搬や処理を他人に委託する際、排出事業者がマニフェストを交付して、その行く末をしっかりと管理・把握することを義務付けた制度のことです。
平成2年、厚生省(現在の環境省)の行政指導によって始まりました。開始当初は、産業廃棄物の中でも爆発性や毒性、人の健康や生活環境に被害を生じるおそれのある特別管理産業廃棄物のみがマニフェスト制度の対象となっていましたが、平成12年から適用範囲がすべての産業廃棄物に拡大されました。
産業廃棄物の委託処理における排出事業者責任の明確化と、不法投棄の未然防止を目的として実施されています。
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02紙マニフェストの利用の流れ
複写式伝票を用いる紙マニフェストは、以下の流れに沿って運用をしていく必要があります。
マニフェストの交付
紙マニフェストはA票・B1票・B2票・C1票・C2票・D票・E票の7枚複写になっており、産業廃棄物の排出事業者はここに必要事項を記入し、収集運搬業者へと交付します。この際、収集運搬業者による署名又は押印を得て、A票は手元に残しておきましょう。
[現時点での紙マニフェストの所在]
排出事業者:A票
収集運搬業者:B1票・B2票・C1票・C2票・D票・E票
運搬終了時
収集運搬業者は、運搬してきた産業廃棄物とともに、残りのマニフェストを処分業者に渡します。処分業者は所定欄に署名をし、B1・B2票を収集運搬業者に返します。その後、収集運搬業者はB1票を控えとし、B2票を排出事業者に送付。運搬終了の旨を報告します。
[現時点での紙マニフェストの所在]
排出事業者:A票、B2票
収集運搬業者:B1票
処分業者:C1票・C2票・D票・E票
処分終了時
産業廃棄物の処分が完了後、処分業者はC1票を保存し、収集運搬業者に対してC2票を、排出事業者に対してD票・E票を送付します。ちなみにこの処分が中間処理だった場合、処分業者はE票を返送せず、最終処分が確認された段階で、最終処分が行われた場所と日付を記載し、排出事業者に返送します。
[最終処分完了時の紙マニフェストの所在]
排出事業者:A票、B2票、D票、E票
収集運搬業者:B1票、C2票
処分業者:C1票
マニフェストの確認及び保管
排出事業者は、収集運搬業者から返ってきたB2票、処分業者から返ってきたD票、E票を、手持ちとA票と照らし合わせ、内容に間違いがないかを確認。問題なければ、そのまま一定期間保管しておきます。
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03紙マニフェストの書き方
紙マニフェストは各都道府県の産業廃棄物協会や建設業協会が販売しており、そこで購入することができます。基本的には用紙の記入欄を埋めていけば問題ありませんが、廃棄物処理法では、交付の際に以下の記載内容を漏れなく記入することが義務付けられていますので注意しましょう。
- 管理票の交付年月日及び交付番号
- 運搬又は処分を委託した者の氏名又は名称及び住所
- 産業廃棄物を排出した事業場の名称及び住所
- 管理票の交付を担当した者の氏名
- 運搬又は処分を受託した者の氏名
- 運搬先の事業場の名称及び住所(積み替え又は保管を行う場合は、その住所)
- 産業廃棄物の荷姿
- 最終処分を行う場所の住所
- マニフェストを交付した者の氏名又は名称及び交付番号(中間処理業者の場合)
- 処分を委託した者の氏名又は名称及び規則第八条の三十一の五第三号に規定する登録番号(中間処理業者で、当該産業廃棄物に係る処分を委託した者が電子情報処理組織使用義務者又は電子情報処理組織使用事業者である場合)
- 産業廃棄物に石綿含有産業廃棄物が含まれる場合はその数量
A票には斜線の入った欄や「中間処理産業廃棄物」の欄がありますが、排出事業者はこちらを記載する必要はありません。これらは、運搬受託者又は処分受託者が記入する必要がある欄となっています。
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04紙マニフェストの保管期間
紙マニフェストは、5年間の保管が必要となっています。その際、A票は交付してから5年、運搬業者や処分業者から返送されてきたB2票、D票、E票は受け取った日から5年、という計算になっています。基本的にはE票が最後に送られてくることになりますので、E票に合わせて各票を保管するようにしておけば、誤って保管期間内の書類を処分してしまうといったトラブルを無くすことができるでしょう。
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05電子マニフェストの紹介
紙マニフェストの運用について解説してきましたが、マニフェストには紙の他に、マニフェスト情報を電子化しネットワーク上でやりとりをする、電子マニフェストというものもあります。
この電子マニフェストは、排出事業者、収集運搬業者、処分業者のマニフェスト業務効率化を図るために導入された制度で、1998年12月より運用が開始されました。
電子マニフェストの運用においては、公益財団法人日本廃棄物処理振興センターが情報処理センターとして指定されているため、そちらが運営する電子マニフェストシステム(JWNET)へ加入しなければなりません。また自身が電子マニフェストシステムに加入するだけでなく、取引のある排出事業者や収集運搬業者、処分業者も電子マニフェストシステムに加入しておく必要があります。
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06紙マニフェストと電子マニフェストの違い
紙マニフェストと電子マニフェストでは、記載すべき内容は同じですが、その運用の仕方等については異なる部分があります。
例えば紙マニフェストには5年間の保管義務がありますが、電子マニフェストの場合は自社保管する義務はなく、 情報処理センターで5年間保管することが(廃棄物処理法で)義務づけられています。
他にも、紙マニフェストは年に一度、都道府県等にマニフェスト交付等状況報告書を提出しなければなりませんが、電子マニフェストであれば、情報処理センターがこの作業を代行してくれます。
また排出事業者によっては、紙マニフェストが利用できず、電子マニフェストの利用が義務付けられているところもありますので、注意しましょう。
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