前田建設工業株式会社様
携帯電話を使った”遠隔立ち合い”で即時にマニフェスト登録が可能に
リバスタの電子マニフェストWebサービスe-reverse.comに、カメラ付き携帯電話を利用した廃棄物の遠隔確認の機能を加え、電子マニフェスト登録をさらに確実・容易にした、e-Picture(イーピクチャー)。いち早くこのサービスを導入し、2003年10月に環境省の「電子マニフェスト普及促進モデル事業」としてスタートさせたのが、前田建設工業株式会社のリテール事業部だ。2004年5月から本格稼働したこのシステムは、同事業部が展開する店舗やオフィスの修繕サービス事業にどのような効果をもたらしているのか。前田建設工業株式会社リテール事業部長の大竹弘孝氏にお話を伺った。
携帯電話を使った”遠隔立ち合い”で即時にマニフェスト登録が可能に
Q. 最初に、リバスタの多機能Webサービス「e-Picture」を、どのように活用されているのかからお聞かせください。
私どもリテール事業部は、個人住宅やマンションを始めとして、フランチャイズ・チェーンである「セブンイレブン」の建物設備の維持・管理業務や、「ユニクロ」の店舗メンテナンスなど、「なおしや又兵衛」という修繕サービス事業を行っています。その際に排出される排出物を電子マニフェストで管理するために、e-Pictureを活用しています。
Q. e-Pictureのメリットをどのようにお感じになっていますか?
携帯電話を使って排出現場から送信されたデータや画像を、事務所のパソコンで確認・承認するだけで、すぐにマニフェストを登録することが可能なことですね。とくに小さな現場の多い私どもの事業には、最適なシステムだと実感しています。
Q. e-Pictureを導入する前は、どのようにマニフェスト管理を?
2001年にリテール事業を立ち上げた当初は、紙マニフェストを使って管理していました。リテール事業の場合、工事費は1件当たり9万円が平均で、小さな工事ではそれこそ1件2万円、3万円の世界です。1件から排出される廃棄物の量はゴミ袋一つ分程度です。こうした小さな現場に当社の社員がすべて立ち会い、紙マニフェストを発行することは、現実的には非常に困難でした。そこで、東京に3カ所、それ以外にも2カ所ほど所定の集積場を設け、施工を担当する社員やパートナー業者さんが各現場から出たものを搬入し、集積場で廃棄物を再利用できる物と分別してから紙マニフェストを発行。そこから処理業者さんが中間処理施設に運搬するという流れを作っていたわけです。これではパートナー業者さんも大変ですし、集積場での処理にも非常に手間がかかります。この問題を解決したのが、リバスタのe-Pictureサービスでした。
Q. 具体的に、廃棄物の処理とその管理業務はどう変わりましたか?
まず、現場で仕事が完了するごとに、そこで出た廃棄物を即時にマニフェスト登録できるようになったことが大きな違いですね。収運業者さんが現場で携帯電話を使って廃棄物の写真を撮影すると、簡易GPS機能により時刻・位置情報を取得出来ます。その画像・時刻・位置情報と合わせてマニフェストデータを入力して私どもの事務所に送信してもらう。それを事務所で確認して承認するだけでマニフェストが発行できるのですから、便利なことこの上ありません。当社の社員がすべての現場に実際に立ち会うことは非常に困難ですが、こうした“遠隔立ち会い”によって社員が現場にいるのと同じように廃棄物の適正な管理が可能になります。e-Pictureを活用することで東京なら東京エリア全域が、言わば一つの現場サイトになるわけです。
Q. e-Pictureを導入するまでの経緯を教えてください。
2003年10月から環境省の「小規模修繕工事におけるカメラ付き携帯電話を利用した受渡し廃棄物の遠隔承認」モデル事業としてスタートしました。小さな現場での電子マニフェスト運用の先進モデルとして認めていただけたわけです。約1年半の試行期間を経て、2004年5月から本格稼働しました
社内システムと連動して大きな相乗効果を生む多機能Webサービス
Q. e-Pictureを導入することで得られた具体的な効果とはどのようなものですか。
まず各現場から排出された廃棄物をその場でマニフェスト登録できるので、いちいち集積場までに運搬する手間がなくなり、廃棄物処理にかかるコストが大幅に削減されたことが挙げられます。 また紙マニフェストの場合、どうしても伝票の紛失や記入漏れといったトラブルが起こります。5年間の保管が法律で義務づけられていますから、マニフェスト伝票の保管・管理も排出事業者にとって大変な負担です。こうしたリスクがなくなったことも非常に大きな効果だと言えますね。さらに一般論として言えば、小さなゴミは一般ゴミに混ぜてしまうことも容易なので、不正な処理をされる危険性もゼロではありません。e-Pictureはそうしたグレーの部分を排除し、不正を防止する上でも大きな効果があると思います。
Q. 電子マニフェストの運用において、JWNETに直接つなぐ場合とリバスタのWebサービスであるe-reverse.comを利用する場合とでは、どのような違いがありますか。
JWNETに直接つなぐ場合、平日と土曜日の午前8時から午後8時までの間しかデータの登録・参照ができませんし、社員が事務所のパソコンからデータを入力する手間もかかります。JWNETに入力したデータをそのまま社内データに使うことができないので、データ入力が二度手間になるという不都合もあります。その点、e-reverse.comなら24時間、365 日利用可能ですし、Webサービスですから、JWNETに登録したデータが社内データとしてそのまま使える仕組みをWebサービスとして提供しています。さらにe-reverse.comを利用するうえでも、小規模工事がメインの当事業部の場合、携帯電話を活用するe-Pictureは、事業部内の工事管理システムとも非常に連動しやすい最適なシステムなのです。
Q. 「なおしや又兵衛」とe-Pictureのシステムの連動性はどんな形で図られているのですか。
当事業部では365 日24時間、お客さまの建物施設の快適性を守るために「mat@bee system」というシステムを導入し、お客さまに対するスポットサービスや巡回サービス、点検診断サービスなど多種多様なサービスをご提供しています。コールセンターでお客様から連絡を受けると、すぐに社員またはパートナー業者が現地に伺い、現地調査と診断を行います。その状態を写真撮影し、見積もりとともにデータを送信。事務所のデータベースから、店舗の診断書を受け取ります。それから必要な修繕作業を行い、作業が終了すると、作業内容と仕上がりの写真を再び事務所に送信。事務所で確認するという手順です。言葉で説明するとややこしいですが、要は派遣された技術者が、どんな巡回点検作業を行ったのか、いつ、どんな修繕作業を開始し、いつ作業を完了したのか、仕上がりがどうなったかが、すべて事務所に居ながらにして把握できます。さらにこのmat@bee systemとe-Pictureを連動させることで、廃棄物についても同時に一元管理できるようになったわけです。
Q. リテール事業部と他の事業部では、e-reverse.comの活用の仕方が異なるのでしょうか。
はい。今のところe-Pictureを導入しているのはリテール事業部だけです。他の事業部でもe-reverse.comによるマニフェスト管理を行っていますが、大規模な建設工事現場では現場サイト内に廃棄物の集積場があり、常に担当者がそこにいますから、携帯電話の画像による遠隔立ち会いの必要はありません。それぞれ仕事の内容に適したシステムを選択しているということです。
e-Pictureのもたらす利便性と「透明性」が今後の競争力のカギを握る
Q. e-Pictureを導入した当初、社員やパートナー業者さんの反応はいかがでしたか?
導入してしばらくの間は、携帯電話の操作に慣れていない人から「面倒くさい」という反応もありましたが、2カ月後にはそうした声はまったく聞かれなくなりました。実際に使ってみると、このシステムの利便性が実感できるからです。以前は工事の報告を必ず電話で行っていましたが、工事が終わる時間は夕方に集中するので、なかなか電話がつながらない場合がありました。また、後から作業完了時の写真を貼って報告書を書き、廃棄物処理についても紙マニフェスト伝票を書いて報告する必要もありました。ところが、携帯電話で画像とデータを送信するだけで業務報告もマニフェスト登録も終わりということになれば、これ以上楽なことはありません。自分で経験して便利さがわかれば、誰も文句はいいませんよ(笑い)。
Q. パートナー業者さんのメリットも大きいということですね。
そうです。これまで報告書や廃棄物の搬出・処理にかかっていた労力を軽減し、そのぶん仕事にふり向けることができるのですから。とくにこれからの時代は、こうしたシステムに前向きかどうかが事業者としての競争力につながっていくのではないでしょうか。これからは我々もパートナーを選ぶ際には、このシステムに対応していただけるかどうかが大きなポイントになると思います。モデル事業を立ち上げた時の収運業者さんは、初期投資が必要でしたが、「これが当社の競争力になる」と考え、前向きに取り組んでくれました。私は、この業界に限らず、「透明性」がこれからの競争力の大きなキーワードになると考えています。とくに建設業界は、ややもするとグレーなイメージを持たれがちですが、業務の透明化、廃棄物処理の透明化によって、業界のイメージアップにもつながるはずです。また、携帯電話でデータをやりとりするのは見た目にもカッコいいですから、職業としても子どもたちにとても良い印象を与えるのではないでしょうか。
Q. 透明性という意味では、画像を使えば廃棄物の内容も一目瞭然になりますね。
その通りです。私達にとっては、施工の仕上がり具合とともに、廃棄物の品質や混入物の記録が鮮明な携帯画像で管理できるのも大きなメリットです。これらのデータを運用していくことは、企業にとってとても大きな武器になると思いますね。私たちが現在標準にしているのは200万画素。携帯電話の画像は日進月歩で向上していますから、今後はさらに画像の鮮明度が増していくでしょう。
また、これまではコストの面でいえば、どうしてもパートナー業者さんに“おまかせ”の部分がありました。
例えば画像で確認することで、1m³の処理費を支払っていたものが、写真で確認すると0.7m³分で済むようになるかもしれない。逆に収集・運搬業者さんのほうも廃棄物の中身が鮮明になることで、「実際にはこれだけ混入物があるから、これだけの処理費がかかる」と堂々と言えるようになる。透明性が高まることは、お互いにとって良いことだと思います。
e-Pictureのような先進モデルが電子マニフェストの普及を一気に加速させる
Q. 今後もe-Pictureの導入エリアを拡大していくご予定ですか?
はい。現在、e-Pictureを導入しているのは「なおしや又兵衛」の事業14拠点のうち、関東の4拠点です。今後さらに拠点を増やし、将来的には全国に広げていきたいと考えています。
Q. 全国に広げていくうえでの課題は何でしょう?
まず第一は、行政の取り組みです。マニフェストの発行には排出事業者の立ち会い義務があるという観点から、e-Pictureを使ったシステムをご存じない自治体がまだ数多くあると思います。e-Pictureは、環境省や東京都から「一歩進んだ形」であることや、排出事業者がリアルタイムで管理している安全なシステムであると評価していただきました。一つの地域を拡大するために、自治体の方やパートナーとなる業者さんに説明会を開いて進めている状態ですから、全国に広がるにはまだ2年くらいかかるかもしれません。
しかし、今後e-Pictureが普及拡大する可能性は非常に大きいと思います。例えばハウスメーカーさんも、新築の時は廃棄物もある程度まとまった量になりますが、その後のメンテナンスなどでは小口の排出物が多くなり、マニフェストへの対応にとても苦労されているようですから、e-Pictureはこの分野にもとても効果的でしょう。
Q. まだまだ、電子マニフェストそのものの普及率が低いのが現状ですが……。
私は、ある時期から急激に普及率が上がるのではないかと思っています。リバスタのe-reverse.comやe-Pictureのような、排出事業者にとっても収運・処理業者にとっても使い勝手の良いシステム、コスト面や業務の透明性を高めるうえでも有効なサービスが普及し始めれば、一気に状況が変わる可能性があります。
どの時代、どの分野においても、時代を先取りするような先進モデルが道を切り拓き、普及拡大を加速させるのだと思う。さらに大きく言えば、e-Pictureのシステムは海外でも非常に注目されると思います。とくに中国などは、今後ゴミ処理の問題がより大きくクローズアップされてくるでしょう。中国では携帯電話が急速に普及していますから、e-Pictureのシステムはとても有効です。
こうした技術は地元の企業を圧迫することもなく、バッシングされるどころか喜んで受け入れてもらえる。国際貢献にもなる技術を海外に輸出することこそが、21世紀に日本が生き残っていける重要な道の一つではないでしょうか。
ユーザー概要
社名 | 前田建設工業株式会社 |
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URL | https://www.maeda.co.jp/ |
事業内容 | 建築・土木・コンサルティング ほか |
所在地 | 東京都千代田区富士見二丁目10番2号 |
創業 | 1919年 |
資本金 | 284億6334万9309円 |
インタビューご担当者様