産業廃棄物の中には、性状や状態によって扱いや分類が変わるものが存在し、その代表的なものに廃塗料・廃インキがあげられます。塗料やインキの使用時は液体状ですが、そのまま放置すると乾燥して固化する性質があるため、廃棄する際の保存方法にも注意を払わなければなりません。ここでは、廃塗料・廃インキの産業廃棄物における分類や、廃棄を考慮した保管のポイントについて紹介します。
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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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1. 廃塗料・廃インキの分類
廃棄物処理法で定める20種類の産業廃棄物の種類の中には、廃塗料・廃インキという分類はありません。そのため、これらを排出する際は廃棄対象となる廃塗料・廃インキの性状および成分によって、以下のように分類がなされます。
①固形状の廃塗料・廃インキ
廃塗料・廃インキが固形状であれば、プラスチックと同じ成分や状態のため「廃プラスチック類」となります。
➁泥状の廃塗料・廃インキ
廃塗料・廃インキが、泥状であれば泥状の物質の総称である「汚泥」となります。ただし、油分を概ね5%以上含むものは、「汚泥と廃油の混合物」となります。
➂液状の廃塗料・廃インキ
廃塗料・廃インキが液状であれば、次の3項目の混合物となります。
- 成分が水溶性で水系エマルジョンの場合「廃プラスチック類」と「廃酸又は廃アルカリ」の混合物となります。
- 成分が溶剤系の場合「廃プラスチック類」と「廃油」の混合物となります。
- 溶剤の引火点が70℃未満の場合は「廃プラスチック類(産業廃棄物)」と「引火性廃油(特別管理産業廃棄物)」の混合物となります。そして特別管理産業廃棄物として特別管理産業廃棄物管理責任者を任命して、通常の産業廃棄物よりも厳しい基準で処理をしなければなりません。
※廃塗料・廃インキを一斗缶やドラム缶に入れて廃棄すると、上記の①~③いずれかに、プラスして「金属くず」との混合物となります。ただし、一斗缶やドラム缶が廃棄物の運搬容器として利用している場合は、廃塗料・廃インキと一斗缶やドラム缶を一緒に廃棄しているわけではないので「金属くず」との混合物にはなりません。
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2. 廃塗料・廃インキの保管のポイント
廃塗料や廃インキといった塗料・塗装系廃棄物は、上でも触れた通り性状や成分によって産業廃棄物としての分類が変わってくるため、それに応じて保管の方法も考えていかなければなりません。
固化しやすいものは細かく分けて梱包保管する
廃塗料や廃インキは、そのままにしておくと乾燥し、固化するものも少なくありません。そのため、例えばドラム缶のような大型の容器に入れておくと、ドラム缶ごと固化してしまい、中身が取り出せなくなってしまうこともあります。そうなると、破砕や粉砕といった中間処理が難しくなり、場合によってはそのまま焼却しなければならないケースも出てくるため、産業廃棄物の増加につながります。固化しやすい塗料・塗装系廃棄物は、細かく分けて梱包保管し、中間処理がしやすい状態にしておかなければなりません。
塗料・塗装系廃棄物の性状を正しく把握しておく
先ほども触れた通り、容器もろとも固化されてしまった廃塗料や、壁紙や器具に付着した廃塗料などは、中間処理が難しく、処理費用も高額になりがちです。
粉体塗料のような粉状の塗料の場合、処理の際に粉じん爆発を起こす危険性があるため、自社内での取り扱いに注意しなければなりません。さらに処理を委託する際にも、委託先企業にしっかりと粉じん爆発防止の対策があるところを選ぶ必要が出てきます。仮に粉じん爆発の危険性があるにも関わらず、正しい処理能力がない企業に委託して何らかの事故が起こってしまった場合、排出事業者責任を問われてしまう可能性もあります。
廃棄物それぞれの性状をしっかりと把握し、それぞれが混ざってしまったりすることのないよう、区別して保管するようにしましょう。
塗料に含まれる成分にも注意する
例えば揮発性で引火性の高い物質や有害物質を含んだ溶剤塗料の場合、ただの産業廃棄物ではなく、特別管理産業廃棄物に分類されるケースがあります。また特別管理産業廃棄物に分類されなくとも、ハロゲンやフッ素といったセメントリサイクルの忌避物質が含まれている場合、その含有量次第でセメントへのリサイクルが難しいと判断されるケースがあります。
一方で水性塗料の場合は、加圧分離等で塗料と水分をきれいに分離することができれば、燃料やセメント原料などへのリサイクルができることもあります。
このように、一口に塗料と言ってもその成分によって扱い方・扱われ方が大きく異なるため、廃塗料・廃インキとして一括りにしてしまうのではなく、塗料・塗装系廃棄物の性状や含まれる成分にも注意して、成分ごとにしっかりと分類をして保管するようにしてください。
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