産業廃棄物の分類の一つに、特定有害産業廃棄物というものがあります。この特定有害産業廃棄物とは、一体どのような種類の産業廃棄物が該当するのか。また似た性質を持つ特別管理産業廃棄物と何が違うのか。詳しく解説します。
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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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目次
1. 特定有害産業廃棄物とは
さまざまな種類がある産業廃棄物の中でも、爆発性や毒性、感染性を持ち、人々の健康や環境に悪影響をもたらすものを、特別管理産業廃棄物と言います。この特別管理産業廃棄物は、廃棄物処理法第2条第5項で規定されており、代表的なものに揮発性の高い廃油や、腐食性の高い廃酸などがあります。
そして、そうした特別管理産業廃棄物の中でも、重金属やPCB、ダイオキシンといった特に有害性の高い物質を含んだ廃棄物のことを、特定有害産業廃棄物と言います。数ある産業廃棄物の中でも、最も危険な種類の廃棄物とイメージすれば、わかりやすいと思います。
特別管理産業廃棄物となるか、特定有害産業廃棄物となるかは、廃棄物に含まれている有害物質の濃度や廃棄物が発生する業種や施設などの組み合わせによって判断されます。排出事業者は、排出する廃棄物が単なる産業廃棄物なのか、それとも特別管理産業廃棄物なのかをしっかり把握するのはもちろん、特別管理産業廃棄物の中でも特定有害産業廃棄物に分類されるものなのかどうかを、正しく認識しておかなければなりません。
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2. 特定有害産業廃棄物の一覧
特定有害産業廃棄物の一覧は、下記の表のようになっています。
特定有害産業廃棄物の一覧
廃PCB等 | 廃PCBおよびPCBを含む廃油 |
---|---|
PCB汚染物 | PCBが染み込んだ汚泥、PCBが塗布もしくは染み込んだ紙くず、PCBが染み込んだ木くず、もしくは繊維くず、またはPCBが付着もしくは封入された廃ブラスチック類や金属くず、PCBが付着した陶磁器くずやがれき類 |
PCB処理物 | 廃PCB等又はPCB汚染物を処分するために処理したもので、環境省令で定める基準に適合しないもの |
廃水銀等及びその処理物 | ・水銀使用製品の製造施設や大学の試験研究機関など、特定の施設において生じた廃水銀等 ・水銀やその化合物が含まれている産業廃棄物、産業廃棄物となった水銀使用製品から回収した廃水銀 |
指定下水汚泥 | 下水道法施行令第13条の4の規定により指定された汚泥 |
鉱さい | 重金属等を、一定濃度を超えて含むもの |
廃石綿等 | ・建築物やその他の工作物から除去した、飛散性の吹き付け石綿、石綿含有保温材、除去工事に用いられたプラスチックシートなど ・大気汚染防止法の特定粉じん発生施設において生じ、集じん装置で集められた飛散性の石綿など |
燃え殻 | 重金属等、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの |
ばいじん | 重金属等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの |
廃油 | 有機塩素化合物等、1,4-ジオキサンを含むもの |
汚泥、廃酸又は廃アルカリ | 重金属等、PCB、有機塩素化合物等、農薬等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの |
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3. 特定有害産業廃棄物の判定基準
特定有害産業廃棄物と判定されるかどうかは、
①該当する種類の廃棄物である
②該当する業種や施設から排出されている
③特定物質が、①②の組み合わせによって指定される基準を超えて含まれている
という3つの条件を満たしているかどうかで判断されます。
また有害物質の基準値については以下の表の通りです。
(単位:mg/I)
溶出試験により判定 | 含有量試験により判定 | ||
---|---|---|---|
燃え殻・ばいじん・鉱さい | 汚泥 | 廃油・廃酸・廃アルカリ | |
アルキル水銀化合物 | 検出されないこと | ||
水銀又はその化合物 | 0.005 | 0.005 | 0.05 |
カドミウム又はその化合物 | 0.09 | 0.09 | 0.3 |
鉛又はその化合物 | 0.3 | 0.3 | 1 |
有機燐化合物 | – | 1 | 1 |
六価クロム化合物 | 1.5 | 1.5 | 5 |
砒素又はその化合物 | 0.3 | 0.3 | 1 |
シアン化合物 | – | 1 | 1 |
PCB | – | 0.003 | 0.03 |
トリクロロエチレン | – | 0.1 | 1 |
テトラクロロエチレン | – | 0.1 | 1 |
ジクロロメタン | – | 0.2 | 2 |
四塩化炭素 | – | 0.02 | 0.2 |
1,2-ジクロロエタン | – | 0.04 | 0.4 |
1,1-ジクロロエチレン | – | 1 | 10 |
シス-1,2-ジクロロエチレン | – | 0.4 | 4 |
1,1,1-トリクロロエタン | – | 3 | 30 |
1,1,2-トリクロロエタン | – | 0.06 | 0.6 |
1,3-ジクロロプロペン | – | 0.02 | 0.2 |
チウラム | – | 0.06 | 0.6 |
シマジン | – | 0.03 | 0.3 |
チオベンカルブ | – | 0.2 | 2 |
ベンゼン | – | 0.1 | 1 |
セレン又はその化合物 | 0.3 | 0.3 | 1 |
1,4-ジオキサン | 0.5 ※燃え殻及び鉱さいは除く | 0.5 | 5 |
DXN(ダイオキシン類) | 3ng/g ※鉱さいは除く | – | – |
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4. 特定有害産業廃棄物のよくあるご質問
Q:特別管理産業廃棄物と特定有害産業廃棄物の違いは何ですか?
A:特別管理産業廃棄物の中でも、重金属やPCB、ダイオキシンなど、特に有害性の高い物質を含んだものが、特定有害産業廃棄物に分類されます。特別管理産業廃棄物の分類の中に特定有害廃棄物があるとイメージするとわかりやすいでしょう。
Q:特定有害産業廃棄物と判定される基準は何ですか?
A:特定有害産業廃棄物は、廃棄物の種類、排出される業種・施設、含まれる特定物質の量、という3つの観点から判定されます。これら3つの基準すべてを満たしている場合に、特定有害産業廃棄物として判定されます。
Q:判定基準が該当していないものは普通産業廃棄物になる?
A:特定有害産業廃棄物の判定基準に該当していない場合、その廃棄物は法律上では普通産業廃棄物ということになります。しかし実際問題として、有毒物質を含んでいるなどの課題があるため、特定有害産業廃棄物として廃棄されているケースも少なくありません。どのように処理を進めるかについては、行政などと相談をした上で、無用なリスクを避けるようにしましょう。
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