廃棄物処理法が改正され、平成29年より産業廃棄物の種類の一つとして「水銀使用製品産業廃棄物」と「水銀含有ばいじん等」という定義が追加されました。これらはそれぞれどういった産業廃棄物を対象としており、どのような対応・処理が必要なのかを解説していきます。
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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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目次
1. 水銀使用製品産業廃棄物の背景
2013年に採択され、国内では2016年に締結された「水銀に関する水俣条約」が水銀使用製品産業廃棄物という定義の追加の背景にあります。この条約は、今なお世界中で続く、人為的な水銀排出による環境や健康への影響を鑑み、水銀の排出削減やそれによる被害を防止するために作られました。
そうした中で、日本では廃棄物処理法が改正され、新たな産業廃棄物の種類として「水銀使用製品産業廃棄物」と「水銀含有ばいじん等」という定義が追加されたのです。
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2. 水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等で共通の新たな措置
産業廃棄物の種類の一つとして、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が追加されたことにより、各種対応についてもそれぞれ新たな措置が定義されました。その中でも、共通の新たな措置は以下の5点です。
業の許可証
取り扱いができる廃棄物の種類に、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が必要
委託契約書
委託する廃棄物の種類に、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれている旨の明記が必要
マニフェスト
産業廃棄物の種類欄に、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれている旨やその数量の明記が必要
廃棄物保管場所の掲示板
産業廃棄物の種類欄に、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれている旨の明記が必要
帳簿
水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等に係るものであることの明記が必要
平たく言ってしまえば、産業廃棄物の種類として水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が追加されたため、その旨をしっかり記載する必要があるということです。
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3. 水銀使用製品産業廃棄物の定義
水銀使用製品産業廃棄物の対象となるのは、
①以下の表に該当する製品
②①の製品を使って作った製品
③①②のほかで水銀やその化合物を使用していることが表示されている製品
となっています。
製品 | 注 | 水銀回収義務 |
---|---|---|
一次電池 | ||
蛍光ランプ | ● | |
HIDランプ、放電ランプ | ● | |
農薬 | ||
気圧計、温度計、ガラス製温度計、水銀体温計、水銀式血圧計、握力計 | 〇 | |
液柱形圧力計、弾性圧力計、圧力伝送器、真空計、水銀充満圧力式温度計 | ● | 〇 |
温度定点セル | ||
顔料 | ||
ボイラ(二流体サイクルに用いられるものに限る)、水銀抵抗原器 | ||
周波数標準機 | ● | |
灯台の回転装置、水銀トリム・ヒール調整装置、差圧式流量計、傾斜計 | 〇 | |
参照電極 | ||
医薬品 | ||
水銀等の製剤 | ||
スイッチ及びリレー(水銀が目視で確認できる場合) | ● | 〇 |
注欄に●印が付いているものを使った組み込み製品は、水銀使用製品産業廃棄物の対象にはならないため、注意しましょう。また、水銀回収義務欄に〇印が付いているものは、水銀の回収も行わなければなりません。
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4. 水銀使用製品産業廃棄物の基準
次に、水銀使用製品産業廃棄物の保管や委託の際に定められている基準について見て行きます。
水銀使用製品産業廃棄物の保管基準
水銀使用製品産業廃棄物を保管する場合、他の物と混ざってしまうことがないように、仕切りを設けるなど必要な措置をしなければなりません。
水銀使用製品産業廃棄物の処理委託基準
水銀使用製品産業廃棄物の収集運搬・処分を委託する場合、水銀使用製品産業廃棄物の許可を持った事業者に委託しなければなりません。また水銀回収が義務付けられている製品の処理を委託する場合、水銀回収が可能な業者に委託する必要があります。
水銀使用製品産業廃棄物の収集・運搬基準
運搬中に破損してしまったり、他の物と混ざってしまったりすることがないように、区別をして収集・運搬をしなければなりません。
水銀使用製品産業廃棄物の処理基準
水銀使用製品産業廃棄物を処理する際は、水銀やその化合物が飛散しないように、必要な措置を講じなければなりません。また水銀回収の対象となる製品については、ばい焼設備によるばい焼や水銀の大気飛散防止措置をとった上で、水銀を回収する必要があります。さらに、水銀使用製品産業廃棄物は安定型最終処分場への埋立は禁止されています。
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5. 水銀含有ばいじん等の定義
水銀やその化合物に汚染された廃棄物を水銀汚染物と言いますが、その中で特別産業廃棄物に該当せず、以下の表の条件に該当するのが、水銀含有ばいじん等として定義されます。そして水銀含有ばいじん等は、水銀の含有量に応じて水銀回収が義務付けられるため注意しましょう。
廃棄物の種類 | 水銀含有ばいじん等の対象となる条件 | 水銀回収義務の対象となる条件 |
---|---|---|
燃え殻、鉱さい、ばいじん、汚泥 | 水銀注を15mg/kgを超えて含有 | 水銀を1,000mg/kg以上含有 |
廃酸、廃アルカリ | 水銀注を15mg/Lを超えて含有 | 水銀を1,000mg/L以上含有 |
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6. 水銀含有ばいじん等の基準
水銀含有ばいじん等には、共通の新たな措置に加えて、以下の基準が定められています。
水銀含有ばいじん等の処理委託基準
水銀含有ばいじん等の収集運搬・処分を委託する場合、水銀含有ばいじん等の許可を持った事業者に委託しなければなりません。また水銀回収が義務付けられている製品の処理を委託する場合、水銀回収が可能な業者に委託する必要があります。
水銀含有ばいじん等の処理基準
水銀含有ばいじん等を処理する際は、水銀やその化合物が飛散しないように、必要な措置を講じなければなりません。また水銀回収の対象となるものについては、ばい焼設備によるばい焼やその他の加熱工程によって、水銀を回収する必要があります。
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