医療関係機関が排出する廃棄物のことを、通称「医療廃棄物」と呼びます。この医療廃棄物とは、具体的にどのような種類の廃棄物なのか。その概要や詳細な分類、処理の際の注意点などについて、詳しく解説します。
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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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目次
1. 医療廃棄物とは
はじめに医療廃棄物について、その概要や詳細な分類について解説します。
医療廃棄物の概要
医療廃棄物とは、医療関係機関で医療行為等を行った際に排出される廃棄物の通称です。医療廃棄物には、前述の医療関係機関から排出される医療廃棄物と、在宅医療から排出される在宅医療廃棄物の2種類があります。
医療廃棄物の分類
医療廃棄物と在宅医療廃棄物には、大きく分けて「産業廃棄物」として扱われるものと、「一般廃棄物」として扱われるものの2種類が存在します。
医療廃棄物のうち、患者の血液や体液が付着したもの、使用済の注射針やシリンジ、レントゲン現像廃液や血液検査廃液など、医療行為そのものによって生じた廃棄物は、産業廃棄物として扱わなければなりません。一方で、包帯やガーゼの繊維くずや書類などの紙くず、厨芥(ちゅうかい)や実験動物の死体などは、一般廃棄物として扱われます。
在宅医療廃棄物については、基本的には一般廃棄物として扱うことになっていますが、例えば調剤薬局等が注射針等を回収する行為が「下取り」とされた場合には、調剤薬局が注射針を排出したという扱いになるため、産業廃棄物として扱われる場合もあります。
産業廃棄物と一般廃棄物では、廃棄物回収後の処理の仕方や処分に必要な費用も異なるため、注意しましょう。
感染性廃棄物と非感染性廃棄物の区分
また医療廃棄物には、産業廃棄物と一般廃棄物の分類に加えて、「感染性廃棄物」、「非感染性廃棄物」の区分も存在します。
感染性廃棄物とは、医療廃棄物の中でも人が感染、また感染する可能性のある病原体が含まれていたり付着していたりするもの、もしくはそのおそれがあるもののこと。それ以外のものは、非感染性廃棄物となります。
感染性廃棄物か非感染性廃棄物かの区別は、「形状」「排出場所」「感染症の種類」の3つの観点から判断されます。
まず、医療廃棄物の形状が下記より、一つでも該当するものがあれば感染性廃棄物となります。
- 血液、血清、血しょう及び体液
- 臓器や皮膚などの病理廃棄物
- 病原微生物に関する試験や検査等で用いた器具
- メスや破損したガラスくずなど、血液等が付いた鋭利なもの
形状が医療廃棄物に該当しない場合でも、次に排出場所を確認する必要があります。
具体的には、排出場所が「感染症病床、結核病床、手術室、緊急外来室、集中治療室及び検査室で使用されたもの」かどうかを確認する必要があります。
例え形状で該当していなくても、この排出場所に該当している場合は感染性廃棄物として扱われます。
形状や排出場所で該当していない場合でも、さらに感染症の種類を確認する必要があります。
具体的には、感染症の種類では、医療廃棄物が下記のどちらかに該当すれば感染性廃棄物となります。
- 感染症法の一類、二類、三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症の治療、検査等に使用されたもの
- 感染症法の四類及び五類感染症の治療、検査等に使用されたもの
以上の3つの観点すべてに該当するものがなかった医療廃棄物が、非感染性廃棄物として扱われることになります。
関連ページ:感染性廃棄物とは
医療廃棄物の具体例
医療廃棄物の具体例について、産業廃棄物と一般廃棄物のそれぞれの代表的なものを紹介します。
- 産業廃棄物
血液、アルコール、レントゲン定着廃液、レントゲン現像廃液、血液検査廃液、レントゲンフィルム、ビニルチューブ、天然ゴムの器具類、金属性機械器具、注射針、アンプル、ギプス用石膏など
- 一般廃棄物
紙くず類、厨芥、木くず、実験動物の死体、包帯やガーゼ、脱脂綿類等の繊維くずなど
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2. 医療廃棄物の処理手順
次に、医療廃棄物の処理手順について見て行きましょう。医療関係機関の場合、排出した医療廃棄物の処理は外部に委託するのが一般的ですが、委託の際にも細かなルールが定められています。
マニフェスト制度
産業廃棄物に分類される医療廃棄物の処理を外部に委託する場合、マニフェストと呼ばれる管理表を排出事業自らが発行し、委託先の業者に交付します。そして、このマニフェストの返送をもって、排出した医療廃棄物が正しく処理されたことを確認しなければなりません。この仕組みのことを「マニフェスト制度」と呼びます。
ちなみにマニフェストには、紙でやり取りを行う紙マニフェストと、インターネット上でやり取りを行う電子マニフェストの2種類が存在します。電子マニフェストの場合、手書きによる記載のミスや漏れの防止や5年間保管しなくても良いなど、さまざまなメリットがあります。
関連ページ:マニフェスト制度とは
医療廃棄物の保管
医療廃棄物、特に危険な感染性廃棄物に関しては、委託業者に引き取ってもらうまでの期間の保管法についても、以下のような細かな規定が定められています。
- 腐敗する可能性の感染性廃棄物を保管する場合は、密閉したり冷蔵庫に入れたりして、腐敗しないようにする
- 飛散や流出、地下浸透や悪臭発散が生じないよう、必要な設備や措置を用意する
- 周囲に囲いが設けられ、取扱注意の表示がある場所で保管する
- 関係者以外が簡単に立ち入ることができない場所で保管する
- ねずみや蚊、ハエなどの害虫が発生しないようにする
- 感染性廃棄物とそれ以外の廃棄物が混ざらないよう、必要な設備や措置を用意する
処理業者の選定
医療廃棄物の処理を外部業者に委託する場合、委託先の業者がその業に関する都道府県知事からの許可を正しく得ているのかを確認しなければなりません。もしこの確認を怠り、許可のない業者に委託してしまった場合、許可を持っていない外部業者はもちろんですが、委託をした排出事業者も同様に罰せられることになってしまいます。
また自治体によっては、医療廃棄物適正処理推進プログラム「ADPP(Advanced Disposal Promotion Program)」と呼ばれる、医療廃棄物処理業界全体の資質向上を目指した認定制度を取得している業者に委託することを推奨しているところもあるため、依頼先の処理業者はしっかり選ぶようにしましょう。
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3. 医療廃棄物のよくある質問
医療廃棄物の産業廃棄物と一般廃棄物の分類基準は?
医療廃棄物のうち、血液、アルコール、レントゲン定着廃液、レントゲン現像廃液、血液検査廃液、レントゲンフィルム、ビニルチューブ、天然ゴムの器具類、金属性機械器具、注射針、アンプル、ギプス用石膏など、医療行為そのものによって生じた廃棄物は、産業廃棄物として扱わなければなりません。一方、紙くず類、厨芥、木くず、実験動物の死体、包帯やガーゼ、脱脂綿類等の繊維くずなどは、一般廃棄物として扱われます。
医療廃棄物の処理の流れは?
医療関係機関の場合、排出した医療廃棄物の処理は外部の業者に委託するのが一般的です。その際、排出事業者はマニフェストを委託先の業者に交付します。このマニフェストの返送をもって、排出事業者は排出した医療廃棄物が正しく処理されたことを確認しなければなりません。
医療廃棄物保管時の注意点は?
医療廃棄物、中でも特に危険な感染性廃棄物は、委託業者に引き取ってもらうまでの期間の保管方法に関して、以下のような注意点が定められています。
- 腐敗する可能性の感染性廃棄物を保管する場合は、密閉したり冷蔵庫に入れたりして、腐敗を防ぐ
- ねずみや蚊、ハエなどの害虫が発生や飛散や流出、地下浸透や悪臭発散が生じないように、必要な設備や措置を講じる
- 周囲に囲いが設けられ、関係者以外が簡単に立ち入れず場所に取扱注意の表示をして、感染性廃棄物以外の廃棄物と混ざらないように、必要な設備や措置を講じる
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