産業廃棄物の収集・運搬は、誰でも自由に行えるものではなく、専用の許可を持った業者だけが、その業務を行うことができます。産業廃棄物の収集運搬を行うために必要となる許可や、その許可が不要とされるケースについて、解説していきます。
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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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目次
1. 産業廃棄物収集運搬とは
産業廃棄物収集運搬とは、その名の通り産業廃棄物を収集・運搬することです。またこうした産業廃棄物の収集・運搬を行う業種を、産業廃棄物収集運搬業と言います。しかし産業廃棄物の収集運搬は、誰もができるものではなく、都道府県知事の許可である「産業廃棄物収集運搬業許可」を持った業者のみが行うことができます。
また排出事業者として産業廃棄物の収集運搬を業者に委託する場合には、上記の「産業廃棄物収集運搬業許可」を持っている業者に委託するのはもちろんのこと、マニフェストを発行し、産業廃棄物の処理の行方をしっかりと管理するなど、正しい対応をしていかなければなりません。
産業廃棄物とは
産業廃棄物とは、事業活動に伴って排出された廃棄物のことです。その種類は廃棄物処理法によって定められおり、「燃え殻」や「廃油」、「紙くず」や「鉄くず」など、全部で20種類に分類されています。事業活動に伴って排出されるという部分がポイントになっており、例えば「燃え殻」や「廃油」、「廃プラスチック類」「ばいじん」など12種類は、どのような事業活動であったとしても、排出された時点で産業廃棄物として扱われます。一方、「紙くず」や「木くず」、「動物のふん尿」などの7種は、建設業に係る事業活動で排出されたり畜産農業から排出されたりするもののみが産業廃棄物として扱われ、指定された事業以外から排出されたものに関しては一般廃棄物として扱われます。
また産業廃棄物の中でも特に、毒性があったり感染性があったり、人体や環境に悪影響を及ぼす可能性があるものは「特別管理産業廃棄物」と呼ばれ、その扱いがより厳しくなります。上で解説した「産業廃棄物収集運搬業許可」も、それだけでは特別管理産業廃棄物の収集運搬を行うことはできず、別途「特別管理産業廃棄物収集運搬業許可」が必要となりますので注意しましょう。
関連ページ:産業廃棄物とは
マニフェストとは
マニフェストとは、産業廃棄物の処理を業者に委託する場合に発行する、専用の伝票のことです。「産業廃棄物管理票」とも呼ばれ、排出事業者はこれを産業廃棄物と一緒に業者間に流通させることによって、各業者に産業廃棄物の情報を正しく伝え、その処理が正しく行われているかを把握します。
このマニフェストには、紙のものと電子のものの2種類があり、特に特別管理産業廃棄物の排出量が多い事業者では、電子マニフェストの利用が義務化されています。マニフェストの管理は煩雑になりがちですので、義務化の対象となっていない事業者であっても、電子マニフェストを利用するメリットは大いにあります。
関連ページ:電子マニフェストとは
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2. 産業廃棄物収集運搬業許可
産業廃棄物収集運搬業許可とは、産業廃棄物の収集・運搬を委託され、事業として行う場合に必要となる許可のことです。
この許可は、都道府県知事によって出されるものであり、許可を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。
- 公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターの講習を受講するなど、産業廃棄物収集運搬業を行える知識・技能があること
- 事業を継続して行えるだけの経理的基礎を持っていること
- 暴力団員や破産者で復権を得ない者など、欠格条項に該当しないこと
- 廃棄物が飛散するおそれがない等の適切な運搬車や、運搬容器その他の運搬施設を有していること
これらの条件を満たした上で、都道府県知事に対して許可申請を行うことで、はじめて産業廃棄物収集運搬業許可を受けることができるのです。
ちなみに、東京都で積み込んだ産業廃棄物を神奈川県に持って行くなど、収集運搬に際して都道府県をまたぐ場合、それぞれの都道府県知事から許可を得る必要があるため注意しましょう。また申請先は各都道府県知事となっていますが、申請の窓口は産業資源循環協会等、別の組織に委託されている場合もあるため、注意しましょう。
申請書類は都道府県庁で直接もらったり、ホームページからダウンロードしたりすることで、簡単に入手することができます。添付書類として各種証明書等も必要になってきますので、申請書類の入手と合わせて進めておくと、無駄を省けるはずです。
申請を行うと審査が行われますが、こちらはおおよそ3ヶ月程度かかります。申請をして即日許可が下りるというわけではないので注意が必要です。また許可の有効期限は5年間となっており、その後も事業を続けて行きたい場合は更新許可申請をする必要があります。
許可申請の流れ
ここで、産業廃棄物収集運搬業許可申請の流れについてまとめておきましょう。
講習会の受講
申請に際しては、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する「産業廃棄物又は特別産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会」を修了している必要があります。 講習会は、申請者が個人の場合は申請者本人、法人の場合は代表者、役員などが受講して、修了しておく必要があります。
申請書類の作成、添付書類の準備
各都道府県庁の窓口やホームページから入手した以下の申請書類様式に必要事項を記載し、申請書類を作成します。
- 産業廃棄物収集運搬業許可申請書
- 事業計画の概要
- 運搬車両の写真(使用するすべての車両を斜め前方1枚・斜め後方1枚の計2枚ずつ撮影。)
- 運搬容器等の写真(廃アルカリ等を運搬する場合に必要。)
- 事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法
- 資産に関する調書(個人用)
- 誓約書
申請にあたっては、申請書類のほかに、以下のような確認書類も必要になります。申請書類と合わせて準備しておきましょう。
申請者が法人の場合
- 定款の写し
- 履歴事項全部証明書
- 役員全員及び5%以上出資している株主の住民票
- 事務所の案内図
- 登記事項証明書
- 講習会修了証の原本
- 自動車検査証の写し
- 直近3年間の貸借対照表、損益計算書
- 直近3年間の法人税の納税証明書 (その1)
申請者が個人の場合
- 事業主の住民票
- 事務所の案内図
- 事業主の登記事項証明書
- 講習会修了証の原本
- 自動車検査証の写し
- 直近3年間の所得税の確定申告書の写し(青色申告・白色申告共通)
- 直近3年間の貸借対照表・損益計算書(青色申告の場合)
- 直近3年間の収支内訳書(白色申告の場合)
- 金融機関発行の残高証明書(原本)(白色申告の場合)
- 市町村発行の固定資産税評価額等証明書(原本)(白色申告の場合)
- 直近3年間の所得税の納税証明書(その1)(その1の税額証明)
申請
申請先は、申請者が個人か法人かにかかわらず、都道府県知事です。申請は通常窓口受付ですが、新型コロナウイルス感染症対策のため、当面の間、郵送でも受付をおこなっています。なお、窓口受付、郵送受付とも申請日時の予約が必要です。申請日が1~2ヶ月先になることもあるので、余裕をもって予約するといいでしょう。
申請の際に、申請手数料を納付します。新規に産業廃棄物収集運搬業許可を申請する際にかかる手数料は、申請場所にかかわらず全国一律81,000円です。産業廃棄物を収集する都道府県と運搬先の都道府県が異なる場合は、それぞれの都道府県に申請をおこない、それぞれの都道府県ごとに81,000円の手数料を納付する必要があります。
審査
申請後、審査がおこなわれます。審査にかかる期間は3ヶ月程度ですが、都道府県によって違いがあります。審査の結果、許可決定が出たら、許可証が交付されます。
関連ページ:産業廃棄物許可証とは
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3. 産業廃棄物収集運搬業許可が不要な例
産業廃棄物の収集・運搬には、産業廃棄物収集運搬業許可が必要であるとお伝えしてきましたが、許可が無くても収集・運搬を行って良いとされるケースもあります。産業廃棄物収集運搬業許可が不要な例について紹介します。
自社の産業廃棄物の収集運搬
産業廃棄物収集運搬業許可は、委託を受けて産業廃棄物の収集・運搬を行う際に必要となる許可です。そのため、自社で排出した産業廃棄物をそのまま自社で収集運搬する場合には、産業廃棄物収集運搬業許可は必要ありません。
ただし自社で運搬を行う場合でも、廃棄物処理法に則り、飛散や流出、悪臭の発生を抑えるといった安全への措置を講じたり、法定の書類を携行したりするなど、守らなければならないルールはあるので気をつけましょう。
再生利用目的の産業廃棄物の収集運搬
「専ら物」とも呼ばれる、空き瓶や古紙など、再生利用目的となる産業廃棄物のみを収集運搬する場合も、産業廃棄物収集運搬業許可は必要ないとされています。
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