数ある産業廃棄物の中でも、特に爆発性があったり毒性があったり、人々の健康や生活環境に被害を及ぼす可能性があるものを「特別管理産業廃棄物」と呼びます。この特別管理産業廃棄物は、その扱いや管理について、通常の産業廃棄物とは異なるさまざまな基準が設けられているため、注意しなければなりません。特別管理産業廃棄物に関する規定や各種の基準などについて、詳しく解説します。
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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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目次
1. 特別管理産業廃棄物とは
特別管理産業廃棄物とは、廃棄物処理法で定められた「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物」のことです。この特別管理産業廃棄物を排出する事業者は、事業所ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を任命したり、通常の産業廃棄物よりも厳しい基準を守って処理を進める必要があったりなど、その取り扱いについては特に注意深く行っていかなければなりません。
具体的な特別管理産業廃棄物は以下の通りです。
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 感染性産業廃棄物
- 廃水銀等
- 特定有害産業廃棄物
- 廃PCB等
- PCB汚染物
- PCB処理物
- 指定下水汚泥
- 鉱さい
- 廃石綿等
- ばいじん・燃え殻
- 廃油
- 汚泥、廃酸・廃アルカリ
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2. 特別管理産業廃棄物管理責任者
廃棄物処理法では、特別管理産業廃棄物を排出する事業者は、排出する事業場ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を設置しなければならないとされています。特別管理産業廃棄物管理責任者の役割やその資格について紹介します。
特別管理産業廃棄物管理責任者の役割
特別管理産業廃棄物管理責任者の役割は、大きく分けて「排出状況の把握」「処理計画の立案」「処理方法の確保」の3つがあります。この3つはそれぞれ密接にリンクしており、どれか一つが欠けてもいけません。排出状況を細かく把握し、それに基づいて処理計画を立て、委託業者を選任したりマニフェストを交付したりします。人々の健康や環境に影響を及ぼすものを扱うからこそ、しっかりと責任感を持って業務にのぞむ必要があります。
特別管理産業廃棄物管理責任者の資格
特別管理産業廃棄物責任者には、感染性産業廃棄物を扱う事業場に対応できるものと、それ以外の特別管理産業廃棄物を扱う事業場に対応できるものの2種類があり、それぞれ任命されるために必要な資格が異なります。
廃棄物処理法では、それぞれ以下のように定められています。
【感染性産業廃棄物を扱う事業場の場合】
- 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、助産師、看護師、臨床検査技師、衛生検査技師又は歯科衛生士の資格を持っている者
- 環境衛生指導員の資格を有し、その仕事で2年以上の実務経験を持っている者
- 大学や高等専門学校などで医学、薬学、保健学、衛生学もしくは獣医学の課程を修めて卒業した者。又はこれと同等以上の知識をあると認められる者
【感染性産業廃棄物以外を扱う事業場の場合】
- 環境衛生指導員の資格を持ち、その仕事で2年以上の実務経験を持っている者
- 学校区分および修了科目に応じて、必要な一定期間の廃棄物処理に関する実務を経験している者
学校区分 | 課程 | 修了科目 | 実務経験 |
---|---|---|---|
大学 | 理学、薬学、工学、農学 | 衛生工学、化学工学 | 2年以上 |
大学 | 理学、薬学、工学、農学または相当課程 | 衛生工学、化学工学以外 | 3年以上 |
短期大学、高専 | 理学、薬学、工学、農学または相当課程 | 衛生工学、化学工学 | 4年以上 |
短期大学、高専 | 理学、薬学、工学、農学または相当課程 | 衛生工学、化学工学以外 | 5年以上 |
高校、中学 | – | 土木科、化学科または相当学科 | 6年以上 |
高校、中学 | – | 理学、工学、農学または相当科目 | 7年以上 |
上記以外 | – | – | 10年以上 |
- 上記と同等以上の知識があると認められた者(公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター主催の「特別管理産業廃棄物管理責任者に関する講習会」など、都道府県や政令市が指定する講習を修了すること)
特別管理産業廃棄物管理責任者の選任
特別管理産業廃棄物管理責任者は、排出事業者内に一人いれば良い、というものではありません。特別管理産業廃棄物が出る事業場すべてに設置する必要があります。事業場の数が多くなれば、それだけ特別管理産業廃棄物管理責任者の数もたくさん必要になってくるため注意しましょう。
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3. 特別管理産業廃棄物の基準
特別管理産業廃棄物を取り扱う時は、さまざまな基準を守りながら、処理を進めていかなければなりません。ここでは、特別管理産業廃棄物の各種基準について紹介します。
特別管理産業廃棄物の保管基準
特別管理産業廃棄物の保管基準は、廃棄物処理法の省令第8条の13によって保管場所の要件や廃棄物の飛散、流出などを中心に規定されており、主に「周囲に囲いがあること」「特別管理産業廃棄物が飛散したり流出したりしないようにすること」「ねずみや害虫が発生しないようにすること」「仕切り板などで他のものの混入防止をすること」「密封や高温の防止など、廃棄物に応じて必要な措置をとること」といった基準などが定められています。
特別管理産業廃棄物の収集運搬基準
特別管理産業廃棄物の収集運搬基準は、廃棄物処理法の施行令第6条の5第1項第1号によって廃棄物の運搬方法や積替方法・積替保管などを中心に規定されており、主に「他の廃棄物と区別して収集・運搬すること」「収集や運搬の際に特別管理産業廃棄物が飛散したり流出したりしないようにすること」「運搬用のパイプラインを使用してはいけない」「運搬時に廃棄物の種類等を記した文書を形態すること」「積替時以外の保管は禁止」といった基準などが定められています。
特別管理産業廃棄物の処分又は再生基準
特別管理産業廃棄物の処分又は再生基準は、廃棄物処理法の施行令第6条の5第1項第2号によって廃棄物の処分の方法や、保管時の量や期間などを中心に規定されており、主に「処分時やリサイクル時には、廃棄物の飛散や流出を防止すること」「焼却は構造基準に合致した焼却設備で行うこと」「廃石綿等は融解など環境大臣が定める方法により行うこと」「保管の際は環境省令で定める期間を超えてはならないこと」「保管量は1日の処理能力の14倍までにすること」などの基準が定められています。
特別管理産業廃棄物の埋立処分基準
特別管理産業廃棄物の埋立処分基準は、廃棄物処理法の施行令第6条の5第1項第3号によって埋立処分時の方法や埋立場所の要件などが規定されており、「地中空間利用で(安定型最終処分場)で埋立処分を行ってはならない」「埋立処分後は、表面を土砂で覆うこと」「周囲に囲いが設けられ、特別管理産業廃棄物の処分場所であることの表示がされている場所で行うこと」「公共の水域や地下水と遮断されているところで行うこと」「感染性産業廃棄物は埋立処分を行ってはならない」などの基準が定められています。
特別管理産業廃棄物の委託基準
特別管理産業廃棄物の委託基準は、廃棄物処理法の施行令第6条の6によって規定されており、「許可を受けた業者に委託すること」「事前に廃棄物の種類や量などを文書で通知すること」「最終処分が完了するまで必要な措置を講じること」などの基準が定められています。
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