産業廃棄物は、家庭ごみのように集積所に出しておけば、ごみ収集車がやってきて自動で処理をしてもらえるものではありません。正しい知識と行動によって、正確に処理していく必要があります。今回は産業廃棄物の処理について、その具体的な流れや、それぞれの事業者が担うべき役割について解説していきます。
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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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目次
1. 産業廃棄物の処理の流れ
産業廃棄物の処理は、大きく分けて「分別・保管」「収集・運搬(積替)」「中間処理」「再生処理・最終処分」の4つのステップに分かれます。
まずは排出事業者が、排出された産業廃棄物を正しく分別し、保管します。それを収集運搬業者が収集・運搬し、処理業者へと引き渡します。そして処理業者は、産業廃棄物の種類に応じて中間処理を行い、再生処理もしくは最終処分を行うことで、はじめて産業廃棄物は正しく処理されたと言えるのです。
どのステップが欠けても、産業廃棄物の処理は成立しません。だからこそ、それぞれの事業者が正しい知識と責任感を持ち、一つひとつのステップを確実に実行していくことが求められます。
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2. 排出事業者
産業廃棄物処理のスタート地点ともなる排出事業者に与えられる主な役割は、産業廃棄物の分別と保管です。それぞれ詳しく見て行きましょう。
産業廃棄物の分別
一口に産業廃棄物と言っても、「燃え殻」や「汚泥」、「ゴムくず」「金属くず」などその種類はさまざまあります。これらを種類ごとに正しく分別することが、産業廃棄物処理のスタートであり、排出事業者に与えられた重要な役割の一つ。中には分別が難しいものもありますが、こうしたものは「混合廃棄物」として、種類ごとに分別した廃棄物とは別に、まとめて管理する必要があります。
産業廃棄物の保管
分別した産業廃棄物は、収集・運搬を行うまでの間、保管しなければなりません。廃棄物処理法では、産業廃棄物の保管に関して、「環境省令で定める技術上の基準に従い、生活環境の保全上支障がないようにこれを保管しなければならない」とされており、ただ単に一ヵ所にまとめておけば良いというものではありません。保管場所の周囲に囲いを設置する、保管場所であることを示した掲示板を設置するといった保管基準が定められているため、しっかり対応するようにしましょう。
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3. 収集・運搬業者
産業廃棄物処理の第二ステップを担当するのが、収集・運搬業者です。収集・運搬業者は、その名の通り産業廃棄物の収集・運搬を行いつつ、場合によっては産業廃棄物の積替を行いながら、産業廃棄物を正しく運んでいきます。
産業廃棄物の収集・運搬
排出事業者が出した産業廃棄物を収集し、処分場まで運ぶことを、収集・運搬と言います。産業廃棄物の収集・運搬を行うためには、都道府県から業の許可を得る必要がありますが、荷積みと荷卸しで都道府県をまたいで移動をする場合、両都道府県からの許可が必要になるため、注意しましょう。
産業廃棄物の積替
産業廃棄物の積替とは、運搬する過程の中で、一度産業廃棄物を降ろし、別の車両に積み替えたり、ある程度の量をまとめたりしてから、再度運搬することを言います。この積替に関しても、廃棄物処理法で周囲に囲いのある場所で行うことや、周囲に飛散したり流出したりしない対策を講じることといった基準が定められています。
関連ページ:積替保管とは
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4. 処理事業者
産業廃棄物の処理における「中間処理」「再生処理・最終処分」を担当するのが、処理事業者です。それぞれ詳しく見ていきます。
産業廃棄物の中間処理
中間処理とは、再生処理や最終処分がしやすい状態にするための処理のことです。その方法としては、産業廃棄物を燃やす「焼却」や、細かく砕いて減容化する「破砕」、汚泥やふん尿のような水分量の多いものから水分を取る「脱水」、より細かい種類へと分別する「選別」などさまざまあり、それ以外にも有害物質を取り除く「無害化」や、廃酸などを中和する「安定化」などがあります。仮にこの中間処理を行わず、そのまま産業廃棄物を埋め立てていては、今頃日本は人の住めない土地になってしまっていたでしょう。それぐらい、処理過程において重要な役割を果たしているのが、この中間処理なのです。
産業廃棄物の再生処理
再生処理とは、いわゆるリサイクルのこと。産業廃棄物を加工し、再度使える状態へと戻します。再生処理は、大きく3つに分かれます。
- マテリアルリサイクル
産業廃棄物の元々の性質を活かして別の製品の原材料とする
(例:廃プラスチックを衣服や文具の材料にする) - ケミカルリサイクル
化学的に分解して化学製品の原材料とする
(例:廃プラスチックをガス化してメタノールなどを抽出し化学工業原料とする) - サーマルリサイクル
産業廃棄物そのものを燃やしたり固形燃料化して活用する
(例:焼却の際に出る熱を利用して暖房や発電に利用する)
産業廃棄物の最終処分
最終処分とは、産業廃棄物を埋め立てることです。埋め立てには、土の中に埋めるものと海に投棄するものの2種類があります。しかし、最終処分をするための土地には限りがあり、また新たに開設するのも簡単なことではないため、排出そのものを減らしたり、中間処理や再生処理で、最終処分が必要な産業廃棄物の量を減らしたりしていくことが大切です。
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