産業廃棄物の種類の一つに「廃酸」があります。廃酸は、数ある産業廃棄物の中でも再生利用率が低く、また一定の条件を満たすものは特別管理産業廃棄物に分類される場合もあるなど、その扱いには注意しなければなりません。今回は廃酸について、法律で定められている定義や具体例、処分方法などを詳しく解説します。
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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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1. 廃酸の基準は?
廃酸とは、廃硫酸、廃塩酸などの液体状の酸性廃液のことです。廃棄物処理法の運用を定めた施行通知においても「廃硫酸、廃塩酸、各種の有機廃酸類をはじめ酸性の廃液のすべてを含むものであること。」と記載がされています。
ちなみに酸性とは、pH(水素イオン濃度)の数値が7よりも小さいもののこと。逆にpH7よりも大きなものは、アルカリ性と呼ばれます。
廃酸と似ている産業廃棄物に廃アルカリがありますが、これは廃酸とは逆で、アルカリ性の廃液のことを指しています。
また廃酸は、著しい腐食性があるpH2.0以下のものや、重金属や有機塩素化合物等を一定濃度以上含む等の条件を満たしているものは、特別管理産業廃棄物に分類されます。取り扱い方法などが通常の産業廃棄物とは異なるため、注意しましょう。
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2. 廃酸の具体例
廃硫酸や廃塩酸、有機廃酸類をはじめとした、すべての酸性廃液が廃酸に分類されます。化学工業では廃酸が反応に使用され、鉄鋼や電気機械工業などの分野では、硫酸、塩酸、硝弗酸、リン酸などがよく用いられるため、廃酸の発生割合が高くなっています。またそれ以外にもガラス窯業、タバコ製造、科学技術研究等の分野でも多く発生します。さらに炭酸飲料なども、pH7以下の酸性の液体であるため、産業廃棄物の場合は廃酸に分類されることになります。
廃酸の具体例としては、下記などが挙げられます。
- 硫酸、塩酸、硝酸などの無機廃酸
- ギ酸、酢酸、シュウ酸などの有機廃酸
- アルコール発酵廃液
- アミノ酸発酵廃液
- 漂白浸漬工程や染色工程で排出される染色廃液
- 写真定着廃液
- 炭酸飲料水
- ビール
- 牛乳
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3. 廃酸の処分方法
廃酸の排出量は、環境省が発表する「環境省 報道発表資料 産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成30年度実績)の概要」によると、2,752千トン。産業廃棄物全体の0.7%の割合となっており、その排出量は決して多くはありません。しかし一方で、再生利用率が30%であり、数ある産業廃棄物の中でも3番目に低い数値となっています。
廃酸の処分方法としては、主に焼却、中和処理、再資源化の3つがあります。
焼却
廃酸の一般的な処分方法の一つが「焼却」です。この際、廃酸を液体状のまま焼却炉に入れてしまうと燃焼の妨げになってしまう可能性もあるため、霧状に噴霧する形で焼却炉に投入し焼却します。
中和処理
中和処理とは、酸性の廃酸を中性に近づける処理のことです。廃酸の場合は、廃アルカリを使用することなどによって中和処理を行います。しかし、中和処理の過程で廃液に含まれていた不純物が汚泥として発生したり、有毒ガスが発生したりする場合もあるため、正しい知識や技術、設備のもとで中和処理を行う必要があります。
再資源化
廃酸は、廃アルカリの中和剤として使用したり、廃酸を冷却して不純物を取り除いて再度利用可能にしたり、金属成分が含まれたものであれば沈殿物から金属を回収したりして、再資源化されます。
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