排出された産業廃棄物は、リサイクルやリユース、減量化など、さまざまな方法で処理がなされますが、そうした処理が難しいものに関しては、産業廃棄物最終処分場で処理されることになります。しかし、一口に産業廃棄物最終処分場と言っても、その種類は複数あり、それぞれ構造や処理できる産業廃棄物の種類が異なるため、違いをしっかりと理解しておかなければなりません。ここでは、産業廃棄物最終処分場の役割や種類について、詳しく解説していきます。
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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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目次
1. 産業廃棄物最終処分場とは
廃棄物処理法の第15条第1項で産業廃棄物の処理施設は規定されております。産業廃棄物最終処分場とは、汚水の外部流出や廃棄物の飛散・流出、ネズミや昆虫の発生などを防止し、環境保全をしながら安全に廃棄物を埋立処分することができる施設のことです。産業廃棄物の中でも、リユースやリサイクルができないものが、この産業廃棄物最終処分場で処分されることになります。ちなみに最終処分については、古くは海洋投棄と土壌還元が主軸でしたが、2007年より海洋投棄が原則禁止となったため、最終処分=陸上の埋立処分と考えて相違ありません。これは海洋汚染防止法の第10条で「何人も、海域において、船舶から廃棄物を排出してはならない。」と規定されております。
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2. 産業廃棄物最終処分場の種類
産業廃棄物最終処分場は、廃棄物処理法によって3つの種類に分類されます。これらは「遮断型最終処分場」「安定型最終処分場」「管理型最終処分場」と呼ばれ、それぞれ処分できる産業廃棄物の種類や最終処分場そのものの構造基準や維持管理基準が異なっています。そのため、産業廃棄物の排出事業者は、自身の排出する産業廃棄物がどの種類の最終処分場で処理されるべきものなのかも、しっかりと把握しておく必要があります。
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3. 遮断型最終処分場
産業廃棄物の中でも特に有害なものを処分することができるのが、遮断型最終処分場です。3種の最終処分場の中でも、環境保全の観点から最も厳重な構造になっているのが特徴です。
遮断型最終処分場で処分される廃棄物
遮断型最終処分場では、有害な燃え殻、ばいじん、汚泥、鉱さいなど、重金属や有害な化学物質などが基準を超えて含まれる産業廃棄物が処分されます。有害なものか、そうでないかは廃棄物処理法によって基準が定められており、上に挙げた燃え殻等の産業廃棄物以外でも、基準値を超える有害物質が含まれている場合は、遮断型最終処分場での処分が必要となります。
遮断型最終処分場の設備と処理方法
有害物質を自然から隔離するために、処分場内への雨水の流入防止を目的として、覆いや雨水排除設備が設けられ、さらに内側には腐蝕防止加工が施された水密性の鉄筋コンクリートが施されるなど、周辺環境と遮断される構造になっているのが、遮断型最終処分場の設備の特徴です。
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4. 安定型最終処分場
安定型産業廃棄物と呼ばれる、有害物や有機物が付着しておらず、雨水等にさらされてもほとんど変化しない産業廃棄物を埋立処分するのが、安定型最終処分場です。
安定型最終処分場で処分される廃棄物
安定型最終処分場では、安定5品目とも呼ばれる廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、がれき類と、これらに準ずるものとして環境大臣が指定した品目が処分されます。ただし、分類としては安定5品目に含まれるものであっても、自動車等破砕物や水銀使用製品産業廃棄物など、有害な物質を含んでいる場合には、安定型最終処分場での処分はできませんので注意しましょう。
安定型最終処分場の設備と処理方法
安定型最終処分場で処分される安定型産業廃棄物は、有害物質を含まず分解しない産業廃棄物であり、かつメタンなどのガスや汚濁水が発生せずに周辺環境を汚染しないものであるため、処分場の内部と外部を遮断する遮水工や、浸透水の集排水設備とその処理設備等の設置は義務付けられていません。そのため、基本的には地中にある空間をそのまま利用して埋め立てることができます。ただし、安定型産業廃棄物以外の産業廃棄物が持ち込まれてしまうことのないよう、搬入した産業廃棄物の展開検査と浸透水の定期的な水質分析の実施が義務付けられています。
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5. 管理型最終処分場
安定型産業廃棄物ではなく、かつ遮断型最終処分場で処理する必要がない程度の有害物質含有量の産業廃棄物は、管理型最終処分場で処理されます。構造的にも、安定型最終処分場と遮断型最終処分場の中間的な機能を持った最終処分場です。
管理型最終処分場で処分される廃棄物
管理型最終処分場では、燃えがら、汚泥、紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さ、鉱さい、ばいじん等が処理されます。これらは安定型最終処分場で処理される安定型産業廃棄物ではなく、かつ有害物質の含有量が少なく遮断型最終処分場で処理する必要のない産業廃棄物に該当します。
管理型最終処分場の設備と処理方法
管理型最終処分場で処理される産業廃棄物には、有機物や有害物質が含まれていることもあるため、処分場内部に貯留構造物や二重構造の遮水工を設置することによって地下水汚染を防止しつつ、発生した保有水等を集排水管で集水し、浸出液処理設備で処理した後に放流する構造となっています。また、ガス抜き設備も設置されており、廃棄物から発生したガスを排出する仕組みも有しています。
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6. 産業廃棄物最終処分場の残余年数
最終処分場の残余年数とは、現在国内にある最終処分場が、満杯になってしまうまでの期間のことです。この残余年数は、最終処分場の埋め立て可能量と、実際の年間埋め立て量を比較して毎年算出されており、令和3年に発表されたデータでは、残余年数は21.4年でした。極端な言い方をすれば、21.4年後には捨てたゴミが処理できず、街にあふれてしまうかもしれないということです。
近年、3R<Reduce>無駄なゴミを出さない・<Reuse>何度も繰り返し使用する・<Recycle>ゴミをリサイクルするに代表されるような、モノを簡単に捨てないという取り組みが広がってはいるものの、ゴミの量はまだまだ多く、令和3年に発表された令和元年度のゴミの総排出量は4,274万トンに上ります。もちろん、リサイクルなどの取り組みが効果を出せていないわけではなく、令和2年から3年にかけて、残余年数は21.6年から21.4年という横ばいの数値を記録するなど、何とか持ちこたえることができています。しかし、国土の規模や住民の理解など、これから新たに最終処分場を作るのはあまり現実的ではなく、いつかは限界が来てしまうことも覚悟しておかなければなりません。
最終処分場とは何なのかを理解しつつ、その最終処分場の置かれている状況についても、しっかりと把握しておくようにしましょう。
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