廃棄物の排出を抑え、適切な処理をすることで環境や生活を守ることを目的として作られた廃棄物処理法。この廃棄物処理法には、産業廃棄物を排出する機会が多い製造事業者等を対象にした「広域認定制度」という特例制度があります。広域認定制度とは、環境大臣の認定のもと、メーカー・事業者等が廃棄物の広域的な処理を地方公共団体ごとの許可を不要にできる制度のことです。この制度は、廃棄物そのものの減量や適正な処理が実現されることを目指して、平成15年に創設されました。ここでは、広域認定制度の概要とそれによって得られるメリットについて、詳しく解説します。
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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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目次
1. 広域認定制度とは?
製造事業者等を対象にした廃棄物処理法に関する特例制度「広域認定制度」とは一体どのようなものなのでしょうか。まずはその概要や対象となる廃棄物等について解説していきます。
広域認定制度の概要
広域認定制度とは、事業者等が廃棄物の広域的な処理を行うことを環境大臣が認定することにより、産業廃棄物処理業に関する地方公共団体ごとの許可を不要にできる制度のことです。この制度を通じて、ユーザーから廃棄物となった製品の広域的な回収やリサイクルをサポートすることで、廃棄物そのものの減量や適正な処理が実現されることを目指して、平成15年に創設されました。
広域認定制度の対象となる廃棄物
広域認定制度の対象となる廃棄物は、法15条の4の3第1項、施行規則第12条の12の8によって、以下のどちらにも該当する廃棄物でなければならないとされています。
1:通常の運搬状況の下で容易に腐敗し、又は揮発する等その性状が変化することによって生活環境の保全上支障が生ずるおそれがないもの
2:製品が廃棄物となったものであって、当該廃棄物の処理を当該製品の製造(当該製品の原材料又は部品の製造を含む。)、加工又は販売の事業を行う者(これらの者が設立した社団、組合その他これらに類する団体(法人であるものに限る。)及び当該処理を他人に委託して行う者を含む。(以下「製造事業者等」という。)が行うことにより、当該廃棄物の減量その他その適正な処理が確保されるもの
例えば動植物性残さのような、短期間で腐敗してしまったりするようなものを扱ったり、製造事業者等ではなく、製品の構造や性状を詳しく理解していない事業者は、この制度の対象となりません。
また産業廃棄物ではない一般廃棄物に関しては、環境省告示によって対象となる廃棄物が定められているため、併せて確認するようにしておきましょう。
広域認定制度の手続き
広域認定制度の手続きは、大きく分けて4つのステップに分かれます。
照会・相談
広域認定制度の申請希望者は、具体的な申請手続きに入る前に、最寄りの環境省地方環境事務所に相談し、構想などが制度に適しているかどうかを判断してもらわなければなりません。
事前確認
地方環境事務所で問題ないと判断されれば、次はより具体的な処理の構想や体制を作り、申請書類を作成します。そして、それを「環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課(産業廃棄物)」・「環境省環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課(一般廃棄物)」で見てもらい、事前確認を受けます。
審査
事前確認が終われば、申請書類を環境省の担当窓口に提出します。書類に不備がなければ、そのまま審査が開始されます。ちなみに、審査では必要に応じて現地調査が行われる場合もあるので覚えておきましょう。
処理・認定
申請書類を提出後、3ヶ月程度で処理が完了し、問題なければそのまま認定となります。審査の進捗等の連絡はないため、少々長い目で見ながら待つようにしましょう。
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2. 広域認定制度を利用するメリット
メーカーが主導して製品の処理を行う広域認定制度は、環境だけでなく顧客にとってもメリットの大きいものとなります。それでは、広域認定制度を利用するメリットについて具体的に見ていきましょう。
競合他社への優位性につながる
購入した製品が不要になった場合、通常は顧客が自分自身で処理委託先を探し、契約しなければならないため大きな手間が発生します。一方、広域認定制度を利用しているメーカーから製品を購入すると、廃棄をメーカーに任せることができるため、顧客の手間や負担が大幅に軽減されます。廃棄処分の手間を軽減したいと考えている顧客にとって、広域認定制度を利用しているという点は大きな魅力に映ることでしょう。
機能回復して再販売できる
機能低下した製品を回収した後、機能を回復・修復すれば低コストで製品を再販売することができます。まだ使用できる製品がそのまま廃棄されることなく、回収して利益につなげることが可能になります。
不適正処理に巻き込まれるリスクが減る
顧客が製品を廃棄する際、悪質な業者に依頼することで不適正処理されたり、不法投棄されたりするリスクがあります。一方、広域認定制度を利用していれば、自社で製品を回収することになるため、不適正処理に巻き込まれるリスクを抑えることができます。
製品設計の改善ができる
廃棄となった製品を効率的に再生利用するために、処理工程から再生または処理が容易な製品設計とすることにつながります。処理を見越した製品設計にすることで、環境にやさしい製品へと改善することができます。
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3. 広域認定取得後の届出必要事項
広域認定制度を取得した後、たとえば以下の点に変更があった場合は、変更届・廃止届を提出しなければなりません。
- 自社や認定内の委託先の代表者・所在地に変更があった場合
- 認定内容に変更・廃止があった場合
規則12条の12の13、規則6条の21の2第1項に則り、変更届と廃止届は、変更もしくは廃止があった日から10日以内に環境大臣に書類を提出します。提出が大幅に遅れた場合は、認定が取り消される可能性もあるため注意が必要です。届出を忘れてしまう要因として、人事異動などにより担当者が変更されることや他業務との兼務で優先順位が下がってしまうことがあげられます。人員配置や仕組み、教育を十分に行い、正しく広域認定制度を運用する体制を整える必要があります。
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4. マニフェスト交付不要の法的根拠
広域認定制度ではマニフェスト交付が不要とされていますが、その根拠について確認してみましょう。
廃棄物処理法第12条の3第1項では「産業廃棄物を生ずる事業者は、…産業廃棄物管理票を交付…」することを原則とする一方で、「環境省令で定める場合」を例外としています。
これを受け、環境省令第8条の19で「産業廃棄物管理票の交付を要しない場合」を列挙するなかに、同条第1項第5号で「法第十五条の四の三第一項の認定を受けた者(=広域認定業者)に…産業廃棄物の…運搬又は処分を委託する場合」と規定して、認定業者に処理を委託する場合を挙げています。
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5. マニフェスト交付は「免除」されているだけ
マニフェストの交付が不要というのは、あくまでもマニフェストの「交付を要しない」という意味であり、廃棄物を対象とする制度の運用でマニフェストの利用を禁じるものではありません。当社の会員様にもこの制度で電子マニフェストを利用されている会員様があり、また、建設業では収集運搬で実績が多いように、そもそも認定業者ではない産業廃棄物処理業者への委託も可能です。(この場合、マニフェストは必要です。)
一方、認定業者に要求される処理工程の管理は、次の環境省令の規定を根拠にマニフェスト同等のレベルであると理解されています。
・施行規則第12条の12の10第3号:
「一連の処理の行程を申請者が統括して管理する体制が整備されていること。」
環境省が発行する「広域認定制度申請の手引き」(P10)には、「統括して管理する体制」の管理手法として「産業廃棄物管理票制度に準じた方法の採用等」が例示されており、マニフェスト同等の管理が期待されていることがみてとれます。
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6. 工程管理の問題点
マニフェストの交付免除は、認定業者の処理業許可を不要としたことのカウンターバランスとして排出事業者の便宜を図ったものとみられますが、制度の普及を促進するための緩和措置であるならば、やや実効性に疑問が残ります。
何故なら、排出事業者責任(後述)も要求される工程管理の厳格さも通常の産業廃棄物処理と大きく変わらない状況は、広域認定制度でもマニフェストを利用しようという動機として十分なものだからです。事実、この制度で電子マニフェストを利用される当社会員様は増える傾向にあります。
ちなみに、広域認定制度に関する電子マニフェスト制度での対応としては、認定業者を「報告不要業者」として設定し、認定業者の運搬、処分の終了報告を不要とする運用が用意されています。しかしながら、これでは認定業者を電子マニフェスト運用の当事者から排除する結果になり、認定業者に要求される工程管理を行うことができません。当社のサービスも含めた今後の課題と言えます。
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7. 広域認定制度と排出事業者責任
広域認定制度を排出事業者の立場でみると、マニフェストの交付免除以外の特例措置はありません。従って、マニフェストに関連する部分以外の廃棄物処理法上の排出事業者責任を果たさない場合は措置命令、罰則の対象にもなります。
また、行政報告においても、認定品目が産業廃棄物である以上、産業廃棄物としての報告が必要です。
認定品目でマニフェストを利用されていない当社の会員様も、「産業廃棄物処理計画実施状況報告書」(いわゆる多量排出事業者報告)の作成時に認定品目の排出実績を合算されていると思いますが、この報告書については平成22年の法改正で不提出、虚偽記載に過料が科されることになりましたので要注意です。認定品目の数量を加算するのを失念した結果、実際には報告が必要な排出数量を上回っていたにもかかわらず、報告書を提出しなかったという事故が起こらないとも限りません。
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8. 委託契約の要否
会員様から、広域認定制度でも委託契約が必要かというお問合せがありました。
これは広域認定制度による処理が委託基準の適用を受けるか否かという問題に言い換えられます。
前述の通り、マニフェスト交付以外に適用除外はありませんので、認定品目が産業廃棄物である以上、委託基準に沿った契約締結が必要です。広域認定制度でも委託契約が必要とされる根拠条文を整理しておくと、以下のとおりです。
許可業者他への委託
・法第12条第5項:
「事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、…その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。」
【上記を受けた「環境省令で定める者」の定義】
・施行規則第8条の2の8第5項:
「法第十五条の四の三第一項の認定を受けた者」(=広域認定を受けた収集運搬業者)
・施行規則第8条の3第5項:
「法第十五条の四の三第一項の認定を受けた者」(=広域認定を受けた処分業者)
委託基準の遵守
・法第12条第6項:
「事業者は、前項の規定(法第12条第5項)によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、施行令で定める基準に従わなければならない。」
【上記を受けた「施行令に定める基準」】
・施行令第6条の2:(いわゆる委託基準)
因みに、法第12条第7項は処理状況確認義務の規定です。
原文には「事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、…処理の状況に関する確認を行い、…」とあります。この確認義務は努力義務と解されてはいるものの、広域認定制度においても適用され、これを怠ると措置命令の対象とされる可能性があるということになります。
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9. 広域認定制度を正しく運用しよう
広域認定制度は、環境大臣の認定により、排出する廃棄物の処理を広域で効率的に進めることができるようになる制度です。自社はもちろん、顧客にとってもメリットの大きな制度ですので、積極的に活用することをおすすめします。広域認定制度の認定を取得する場合は、申請や届出を行い、社内の運用体制を整えて、正しく運用していきましょう。
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