排出事業者は、産業廃棄物の処理を別の業者に委託する場合、個別に委託契約を結ばなければなりません。その際に必ず確認しなければならないのが、その業者が持っている「産業廃棄物許可証」です。許可証がない業者に業務委託することは当然のことながらNGですが、許可証を持っているからと言ってどのような委託内容にも対応できるわけではなく、排出事業者の責任としてその内容をしっかり確認しなければなりません。ここでは、産業廃棄物許可証の概要と中身について、詳しく解説します。
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「産廃担当者が知るべき廃棄物処理法」を1冊にまとめました
新しく産廃担当者となった方向けに、廃棄物処理法を中心に知っておくべきことを簡単に紹介します。
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目次
1. 産業廃棄物処分業許可証とは
廃棄物処理法では、産業廃棄物の処分を事業として行う場合、その区域を管轄する都道府県知事等の許可を受けなければならないとされています。その許可を受けた上で発行されるのが「産業廃棄物処分業許可証」であり、これがなければ、業者は産業廃棄物の処分を事業として行うことができません。
そして、排出事業者は産業廃棄物の処分を別の業者に委託する場合、この許可証を持った業者に委託することが義務付けられています。もし仮に、許可証を持っていない業者や許可証を偽造した業者に委託してしまった場合、罰則として「5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又はこの併科」が適用されてしまいます。
つまり、産業廃棄物処分業許可証は、処分を行う業者がしっかりと対応しなければならないのはもちろんのこと、そこに委託をする排出事業者も、その中身をしっかりと理解し、確認しなければならないものなのです。
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2. 産業廃棄物処分業許可証に書かれていることとは?
産業廃棄物処分業許可証は、都道府県等によって様式や書式が微妙に異なることがありますが、記載される基本的な内容は変わりません。以下に、代表的な記載事項について紹介していきます。
許可番号
産業廃棄物処分業許可証には、業者ごとにそれぞれ独自の10桁か11桁の許可番号が振り当てられます。許可番号には決まりがあり、左から順に「都道府県・政令市番号」・「業種番号」・「都道府県・政令市が自由に定める番号」・「固有番号」となっています。例えば東京都で委託をするのに、「都道府県・政令市番号」が神奈川県のものになっていたりすると、その許可証はこの委託に際して有効ではないと見抜くことができます。
優良マーク
5年以上の事業実績を持っていたり、定められた情報をインターネットで一定期間継続して公表していたりなど、一定の条件を満たした処分業者は、優良産廃処理業者として認定され、この優良マークを許可証に付けてもらうことができます。排出事業者が委託先を探す際には、この優良マークの有無を確認するようにすると良いでしょう。
許可の年月日、許可の有効期限
許可証を取得または更新した年月日が記載されます。また許可証には有効期限が定められており、その有効期限についても、許可証内に記載されます。
ちなみに、許可証の有効期限は通常5年間ですが、優良マークのある会社は7年間となっているため、そこもしっかり見るようにしておきましょう。
事業の範囲
産業廃棄物処分業許可証には、処分方法や処分できる産業廃棄物の種類についても記載がされています。ここに記載がない種類の産業廃棄物の処理を委託することは禁止されているため、自分たちが排出する産業廃棄物の種類についてしっかりと認識した上で、内容を確認することが求められます。
また、産業廃棄物許可証は、処分業者だけでなく、産業廃棄物の収集・運搬のみを行う業者も必要です。特定の業者がどの種類の許可を得ているかは、前述した許可番号の中の「業種番号」を見れば判断できます。
業種番号の振り分けは以下の通りです。
- 産業廃棄物収集運搬業:積替を含まないもの(0),積替を含むもの(1)
- 産業廃棄物処分業:中間処分のみ(2),最終処分のみ(3) 中間処分・最終処分(4)
- 特別管理産業廃棄物収集運搬業:積替を含まないもの(5),積替を含むもの(6)
- 特別管理産業廃棄物処分業:中間処分のみ(7),最終処分のみ(8),中間処分・最終処分(9)
処理に関する設備
委託された産業廃棄物を処理するための施設について、その設置日や設置場所、処理能力等が記載されています。処理能力を超えた量を委託することはできないため、ここもしっかり確認しておかなければなりません。
自治体をまたぐ際の許可
産業廃棄物の運搬に際して複数の自治体をまたぐ場合、積み込み場所と荷卸し場所の両方の自治体から許可を得る必要があります。
ちなみに、A県で積み込んだ産業廃棄物をB県を通ってC県で荷卸した場合、通過しただけのB県から許可を得る必要はありません。
都道府県情報
許可書の申請時の資料や設備の情報を元に、別途都道府県等から条件を指定される場合があり、その内容が記載されている場合があります。
また先ほども解説した通り、産業廃棄物の処分が複数の自治体をまたぐ場合には、発生する場所と処分する場所それぞれの許可が必要になることも覚えておきましょう。
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3. 確認すべきポイント
産業廃棄物処理業の許可証の記載内容を理解したところで、次はその中でも特に注意して確認すべきポイントについて解説します。
有効期限
産業廃棄物処理業の許可証は、通常の業者で5年間、優良認定を取得した業者で7年間が有効期限となっています。この有効期限を過ぎた業者に業務委託をすると法律違反になってしまい、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金またはこの両方、という罰則が適用されてしまう可能性があります。罰則の中でも特に厳しいものの一つですので、有効期限のチェックは入念に行うようにしましょう。
有効期限が切れていても大丈夫なケース
産業廃棄物処理業の許可証の有効期限が切れていても大丈夫なケースとして、「有効期限が切れているが、更新は完了している場合」と「有効期限が切れているが、更新の申請中である場合」があります。
前者の場合は、業者から速やかに更新後の許可証を取り寄せ、古い許可証と差し替えましょう。後者の場合は、念のため業者から更新申請の書類を取り寄せて申請中である旨を確認し、無事許可が更新されたらすぐに新しい許可証を送ってもらうようにしてください。
偽造のケース
産業廃棄物処理業の許可証は、書類の様式などがWeb上でも閲覧することができるため、偽造されてしまうケースもあります。過去の事例では、許可証の偽造を見抜けず業務委託をしてしまい、排出事業者に重い処罰が下ってしまったこともあります。
しかし多くの場合、許可証をしっかりと確認すれば偽造は見抜けるものです。「優良認定がないのに有効期限が7年になっている」「許可番号の都道府県を表す数字が合っていない」など、改めて見ればすぐに偽造とわかるようなものも多いため、注意して確認するようにしてください。
都道府県・市の許可証
産業廃棄物処理業の許可証は、都道府県知事の許可として出されるのが基本ですが、政令指定都市と中核市、大牟田市の場合は市長が許可を出すことになっています。そのため、例えば大牟田市で産業廃棄物処分業を営む場合には、福岡県ではなく大牟田市からの許可を得なければならないということです。ここも偽造されたり見落としたりしやすいポイントですので、気をつけましょう。
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4. まとめ
産業廃棄物処分業許可証について、その概要や詳しい中身について解説しました。過去には、処理業者が提出した許可証の偽造を見抜けず、排出事業者に処罰が下った例もあり、その中身の確認は決して他人事ではありません。今回の記事を参考し、しっかりと許可証を確認する癖をつけ、万が一のトラブルを防ぎつつ、より良い環境で事業を進めていきましょう。
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